まだ著作権表記で消耗してるの?
年末年始対応の時期ですね。
svg画像を 著作権表示 - Wikipedia より。
企業で働くエンジニアは、あけおめ対策をはじめとした年末年始の対応準備に時間を割いていることでしょう。
その中でも、毎年恒例の著作権表記、特に年号更新の対応に追われる方が多いでしょう。
アレ、不要なので辞めましょう。
要点
- 著作権表記は現在いちいち書く必要性はありません。
- 年号表記も特に意味はありません。
- そんな対応に時間をとられる必要はありません。辞めましょう。
- もっと言えば "All rights reserved." も不要です。辞めましょう。
どゆこと?
そもそも著作権表記とは?
著作権表示(ちょさくけんひょうじ)は、著作物の複製物につける著作権者や著作物の発行年等に関する表示である。著作者が著作権を取得するため、著作物の創作のほか、何らかの手続き等(方式)が必要な法域においては、著作権表示は重要な意味があるが、現在は、ほぼ全ての法域で著作権は、著作物の創作とともに発生するので、重要性は失われている。
著作権表示 - Wikipedia より引用
日本国内に於いては、1971年7月24日にパリで改正された万国著作権条約に受諾しており、現在はこちらの内容に批准しています。 その第三条四項には以下のように定められています。
4 各締約国は、他の締約国の国民の発行されていない著作物を、方式の履行を要することなく保護するための法的手段を確保する。
千九百七十一年七月二十四日にパリで改正された万国著作権条約 - Wikisource より引用
ここでいう "方式" とは、著作権の無方式主義と方式主義のことです。
無方式主義 著作物を著作もしくは発表した時点で自動的に著作権が発生し、それ以外には何らの方式(又は手続)の履行を要求しない法制 方式主義 納入、登録、表示、官庁への納入、登録、登録手数料の支払い、自国内における製造もしくは発行などといった「方式」を履行することにより著作権の発生要件とする法制
著作権表示 - Wikipedia より引用
またまたWikipedia引用ですみません。ちなみに私はこの件について8年程前から疑問を抱き、毎年この時期になる度に当該Wikipediaページをwatchして参りました(編集は一切してない)。昔に比べると非常に明瞭になっており、私以外にもこの件で戦ってきた人が居るのかと思うと非常に感慨深いものがあります。 当時はガラケー全盛期の為、All rights reserved. を書くだけでフッターに無駄な改行が入ったのです。
要するに、「万国著作権条約に締約している国の国民は、何もせずとも著作物の権利を保護する法的手段を持っている。」ということになります。
何もせずとも、です。
つまり要らないのです。
ちなみに (c) 表記について
前述の通り不要なのですが、方式主義に於いて認められているのは © であり、(c) は認められていません。
その為、.txt ファイルとかに (c) と書いていても無効なので書くのは辞めましょう。
ちなみにAll rights reserved.は?
こちらは万国著作権条約には関係ありません。万国著作権条約制定前に策定されたブエノスアイレス条約という条約があるのですが、この条約では「権利を所有している」表記が必要でした(方式主義)。
アメリカ合衆国をはじめとした国々が締約し、「権利を所有している」表記として、All rights reserved. が使われました。 現在では、アメリカを含め殆どの国がベルヌ条約*1及び万国著作権条約にも締約している為、この表記は現在は不要です。
ちなみに、 日本はこのブエノスアイレス条約に締約していません。
したがって、 日本では全く意味がありません。
アメリカ企業の権利表記を日本企業がコピペしたものが蔓延したんでしょうねぇ...
All rights reserved. のデメリット
All rights reserved. の直訳は、「すべての権利を保有している」です。
イマドキのWebサービスに於いて、そのようなケースが果たして本当に成立しているのでしょうか?
- CGM
- ユーザが投稿した写真やデータ。規約にも運営側に帰属する旨記載して、規約との齟齬はありませんか?
- ユーザが投稿した歌詞や第三者が著作権を保有している画像。これも運営者が権利を保有しているのでしょうか?
- 外部データ
意味の無い All rights reserved. を書くことで、逆に訴訟や炎上リスクを招く可能性もありそうです。
規約の話ではありますが、mixiの規約改定時に問題になりましたね。
ミクシィの利用規約改定問題が示すCGM時代の権利処理のあり方 - ビジネススタイル - nikkei BPnet
他の例として、有名なCGMサービスとして ボケてがありますが、全ページのフッターに All rights reserved. と書いてあります。
しかし、利用規約には、
第17条 弊社の財産権
( 1 ) 利用者が送信(発信)したコンテンツおよび情報を除き、本サービスに含まれる一切のコンテンツおよび情報に関する財産権は弊社に帰属します。
と書いてあり、Allとは一体...うごごごごご...と思ったりします。*2
利用者が投稿したコンテンツおよび(他者の著作物を含む)画像の権利の帰属を宣言しない辺り、ボケてはしっかりしている方かも知れません。
お前専門家じゃねーだろ。ただのエンジニアがナマいってんじゃねーぞ。
はい。専門家ではありません。ぜひとも専門家からの意見もいただきたいところです。 弁護士ドットコム - 無料法律相談や弁護士、法律事務所の検索 でニュースとして取り上げていただけること、お待ちしております。
とはいえ根拠も無いままではアレなので、ここは最強法務部と名高い任天堂法務部のチェックを通ったであろう任天堂公式サイトを確認してみましょう。
お、超シンプルです。私が思う理想形です。
先日 サムスンから賠償金5億4800万ドルせしめた Appleはというと、
Apple より
あ、年号もAll right reserved. がありました。
本気で何も書いてない...
思ったよりバラバラの模様です。
対応
原理主義的な話を散々述べましたが、本懐は「毎年毎年、年号を更新するだけの無駄なクソ作業を無くしたい」です。
現実として、社内の一エンジニアや受託エンジニアでまるっと無くすというのは現実的ではないでしょう。
その場合の対応として、以下の解決策を検討しましょう。
動的ページ
Date()
関数などから現在の年号を表記するなどして動的に出力しましょう。
静的ページ
404.html とか 500.html などは、コンテンツなんてあってないようなページなので、© 会社名 または© 会社名 All rights reserved. にして年号は無くしましょう。
クライアント側で実行するJavaScriptでの年号出力は推奨しませんが、どうしても上長がOKしてくれない場合や、一時的なキャンペーンページなどの静的ページではJavaScriptでの実行もアリかもしれません。JavaScript無効設定での著作権表記について問題視する上長ならば、著作権表記自体の不要性やコストについても議論の余地がありそうです。
いずれにせよ手動更新は辞めましょう。
上長を説得する材料として
以下のサイトを判断材料にしてもらいましょう。
- 最強法務部
- 任天堂ホームページ|Nintendo © Nintendo
- MS
- Don’t be evil.
- Google 表記なし
- エンジニア御用達
- Qiita - プログラマの技術情報共有サービス © 2015 Increments Inc.
- ぼくらの
- はてな © Hatena
〆
こんなことに時間を浪費しているうちはスピーディな開発なんて出来やしない。